中国上海で仕事、生活事情 

上海に移り住んだおじさんが見た中国の仕事、生活事情

中国で外国人が就労するのに必要な就労類居留証の取得(2019年取得)遅れで起きた事

こんにちは、cnlifeです。

 

現在中国上海在住で、事務系の仕事をしてますが、このブログでは中国での仕事や生活についての情報提供をしています。

 

この記事は、中国へ就労ビザなどで入国して、その後就労類居留証取得をするまでに必要な手続きと手続き遅延で起きた事に関する記事です。

 

外国人就業許可手続きの就労許可通知(就労ビザ取得に必要な書類)取得までの中国側手続の解説は、別途記事をご参照下さい。

 

中国側の手続きや書類を説明する為、適宜日本語にしてますが、正確な翻訳ではないかもしれませんので、ご了承下さい。(一部固有名詞等には中国語を付けてます)

 

中国では地域及び当局の担当者により運用が異なることが有り、規制もよく変わりますので、実際に手続きを行う場合は専門家に確認して下さい。

 1.中国の就労許可を取る一般的なパターン

  ①中国での勤務が内定

    ↓

  ②中国の勤務予定先または就労サービス受託

   会社へ就労ビザに必要な書類を送付。

    ↓

   ③「外国人就労許可通知」を受領

    ↓

  ④日本国内にある中国の査証サービスセン

   ターで就労ビザ取得

    ↓

  ⑤中国勤務予定者、中国へ入国

    ↓

  ⑥外国人就労許可証(カード)を外国専門家局

   (中国語:外国专家局)へ申請、取得

    ↓

  ⑦外国人臨時居住地登録書(中国語:境外人员

   临时住宿登记单)を近くの公安局窓口申請、

   取得(すぐもらえます)

    ↓

  ⑧就業類居留証(中国語:工作类居留证)申請

   外国人就労許可証(カード)、パスポート、

   外国人臨時居住地登録書、健康診断書、

   雇用先の申請願い、雇用先の営業許可証原本

   とコピーを持って、公安局出入国管理局へ

   行き、そこで写真を撮り、居留証申請書を

   記入。10日程で居留証取得。

 

この記事は、上記⑥~⑧に関する話になります。

上記①~③については、「中国就労ビザの取得(2018年取得)手順のうち、中国側の手続き」をご参照下さい。

 

日本側での手続きは、以下の記事が参考になります。

【体験記】中国就労ビザ (Zビザ) の取得手順とランク分けの目安【2018年取得】 - エンジニアの中国ブログ

 

2.外国人就労許可証(カード)の申請

訪中外国人就労管理サービスシステム(中国語:外国人来华工作管理服务系统)で、外国人就労許可証を申請します。

 

就労ビザを取得する為に「外国人就労許可通知」申請・取得済ですので、外国人就労審査は終了しており、申請すれば一週間程で取得できます。

 

3.外国人臨時居住地登録書(中国語:境外人员临时住宿登记单)の申請

外国人が中国のホテルに宿泊する場合、ホテル側が居住地登録をしてくれますが、部屋を賃借りして住む場合、賃貸契約書原本とコピーを近くの公安窓口に持って行って、手続きをする必要があります。

 

中国の出入国管理法(中国語:中华人民共和国出入境管理法)の第39条の規定で、外国人は入居から24時間以内に登録すべきとなっています。

 

会社の担当者も私も、この事を知らずに20日程遅れて登録に行きましたが、注意をされただけで、外国人臨時居住地登録書はすぐ発行してもらえました。

 

4.就労類居留証の手続き

手続に必要な書類は以下の通りです。

・パスポート

・外国人臨時居住地登録書(中国語:境外人员临时住宿登记单)

・ビザ居留証申請書(中国語:外国人签证证件申请表)

 公安局出入国管理局に行くと、写真をその場で

 取り、QRコード付きの領収書のようなものを渡

 される。

 それを専用の機械にかざすと、写真付きの申請書

 が印刷される。

 必要事項を記載して。申請人がサインする。

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居留証申請書 表 裏

・健康診断書(中国語) 

 公安局出入国管理局の窓口で渡された資料に

 よると、中国国内の公安局出入国管理局指定

 の健康センターが発行した検査証が必要と

 なっています。

 上海は上海国際旅行衛生保険センター

 (中国語:上海国际旅行卫生保健中心)で、

 何か所かあります。電話で予約して、検査を

 受け、一週間後ぐらいに受け取れます。

・雇用先企業作成の申請願い(中国語:单位申请公函)

 ○○さんは会社に必要で××の仕事をして

 もらうので、1年間有効の就労類居留証

 発行を申請します、とういうような内容

 の申請願い。会社印が必要。

 

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雇用先作成の申請願い

・雇用先企業の営業許可証原本とコピー

・外国人就労許可証(カード)原本、カード両面のコピー、カード内情報の印刷

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外国人就労許可証

 裏面右下のQRコードを読んで、内容を印刷する。

 下のような情報が見れます。

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外国人就労許可証内情報

上記書類を取り揃えて、窓口に持っていき、窓口の担当者が書類をチェックして受理されれば、受理票を渡されます。受理票にいついつ何処で居留証(パスポート上にシール貼り)を受け取れると記載されているので、指定日以降に取りに行くと完了です。

(その間、パスポートが有りませんが、受理票がパスポートの代りとなります。)

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居留証


 

中国での勤務や転職が内定してから就労許可取得・居留証取得まで、3か月ぐらいかかってしまうのは、書類の整備(日本で発行する書類の取得、中国語へ翻訳、申請書の記入など)が大変だからです。中国での勤務先が決まっていれば、普通の日本人(重大な犯罪履歴がない人)が中国で就労するのは難しくないと思います。

 

以下の記事は、就労類居留証の取得が遅れて起きたことで、まれなケースかと思いますが、中国の一面を理解するのに役立つかと思い記載しました。

 

5.中国で就労する場合の就労ビザと就労類居留証について

就労類居留証の取得遅れで起きた事の理解の為、先に関連規制について説明します。

 

中国の出入国管理法(中国語:中华人民共和国出入境管理法)の第41条の規定で、外国人が中国で就労する場合、労働許可と就労類居留証を取得しなければならないとあります。

 

Zビザ(就労ビザ)で中国に入国したら30日以内(Zビザの有効期間内)に、外国専門家局から就労許可証を取得し、居住地の近くの公安局で外国人臨時居住地登録書を取得し、健康診断書を取って、公安局出入国管理局で就業類居留証を申請しないと罰金とかの処分を受ける可能性があります。

 

労働許可カードと就労類居留証の両方が揃っておらず、就労許可カードを取得しただけで、中国で働いていると不法就労とみなされます。(中国の出入国管理法の第43条(1)に、不法就労の定義の一つがあり、労働許可と就労類居留証を取得せず中国国内で働いた場合、とあります。)

 

中国の出入国管理法の第80条に不法就労の罰金の記載があり、外国人不法就労者には、5千元以上2万元以下の罰金、不法就労者を紹介した会社には紹介一人当たり5千元、合計10万元を超えない罰金、不法就労者を雇用した会社には不法就労者一人当たり1万元、合計10万元を超えない罰金、と決められています。

 

6.就労類居留証取得遅延で起きたこと

私は2019年に日中合弁企業に転職しましたが、嫁さんが中国人なので、先に親族訪問ビザで中国へ入国し、親族訪問類居留証(中国語:团聚类居留证,1年有効)を持っていました。その状態で転職、転職先の日中合弁会社を通じて、外国人労働許可申請を行いました。

 

転職先が日中合弁企業なので、外国人就労手続きに詳しいかと思いきやまったくの素人担当者が手続きを行い、大変な思いをしてしまいました。この手の手続きは専門業者を使われることを推奨します。

 

通常、日本人が中国で勤務する場合、日本で就労類ビザ(Zビザ)を取得し、中国へ入国後、外国人就労許可証を取得、その状態では居留証がないので、Zビザの有効期限が切れる前に就労類居留証の手続きを行います。

 

私の場合、すでに中国の居留証は持っており、その状況で外国人就労許可申請を行って許可されたので、親族訪問類居留証の期限が切れる前に、就労類居留証へ切り替えればOkだと思っていました。

 

外国人就労許可証を発行してくれた外国専門局からは、就労類居留証の手続きをするように、というような話は一切なく、私も合弁会社の担当者も就労許可取得で完了と思っていました。

 

合弁企業で働き6か月程度過ぎた頃に、出入国管理局に行って、就労類居留証へ切り替え手続きの相談に行ったら、雇用契約書を持ってくるように言われました。再度雇用契約書を持っていくと、すでに6か月働いている契約になっており、就労類居留証なしで働いており、不法就労だという話になりました。

 

合弁会社の担当者と再度確認に行ったら、不法就労で雇用先は少なくとも1万元の罰金、不法就労者も罰金で、不法就労による所得も没収になると言われました。

 

私は罰金を覚悟しましたが、合弁会社の担当者が中国側親会社の管理部門責任者に相談したところ、罰金という名目はなんとか避けて就労類居留証が取れるよう交渉しなさいとの指示でした。(中国側の親会社は上場企業です。)

 

ここから先、合弁会社の担当者(以下Aさん)と出入国管理局の担当者及びその上司(主にこの上司が交渉先となりました。以下X氏と記載します)の間で交渉が始まりました。

 

Aさんは、X氏に私の不法就労については勉強不足による過失で、故意に行ったものではなく、就労類居留証取得に必要な費用は必要なだけ支払うが、罰金という名目はさけて手数料とかの名目で支払って手続きできないかと交渉を始めました。

 

交渉を円滑に進めるためにAさんは、X氏を食事に誘って話をしようとしますが、X氏は会食は拒否するものの、出入国管理局ではなく近くのお店で合って話をしようとなり、2,3回AさんはX氏と罰金回避交渉をして、X氏の意向を探りました。

 

X氏からは、本件は担当者から本署に報告が上がっていたら、もう罰金で処理するしかないが、取り合えず、就労類居留証手続きに必要な書類を提示するようにと言われ、Aさんは書類を持って行ってX氏と交渉しました。

 

毎回,X氏と会うたびに、就労類居留証手続きに必要な書類を持っていくと、Xは書類をちらっと見て,同じ書類を受け取とってました。

 

また、X氏に就労類居留証取得に実際いくらぐらい手数料が必要か言ってほしいとX氏に聞くと、「Aさん、外国人の不法就労でいくら罰金が掛かるか百度(中国の検索サイト)で調べて下さい」というのみで、一向に話が進まず1か月が過ぎました。

 

同じ交渉が数回続き、Aさんは罰金処分は回避できる感触ありと見てましたが、X氏に書類を渡して交渉するだけでは何の進展もありませんでした。

 

Aさんは中国側親会社の管理部門責任者に相談、取り合えず数千元元を封筒に入れて持って行って、X氏に渡してみて反応を見てみようという話になりました。

 

中国側親会社の管理部門責任者の話では、お金だけ受け取って結局依頼したことをしてくれない役人もいるので気を付けるようにとの話でした。

 

AさんはX氏にアポを取り、出入国管理局の近くのお店で合って、なんとか罰金を避けててほしいといつもの交渉が始まります。

 

お金はA4サイズの封筒に入れ書類の間に挟んて、透明のクリアファイルに入れてX氏の前のテーブルに置いていました。Aさんはトイレに行くと言って席を立ち、物陰からX氏の様子を観測しました。

 

X氏はクリアファイルの中は見ず、上から押さえるように触って、いつもの書類以外に厚みのある物が入っている事を確認していました。

 

Aさんは席に戻って、X氏に就労類居留証の件何とかしてほしいと話をすると、X氏は「Aさん、外国人の不法就労でいくら罰金が掛かるか百度(中国の検索サイト)でよく調べて下さい、不法所得の没収も有りますよ」と言って、話が進みませんでした。

 

以上の話は、私はAさんから聞いた話で、現場にはいませんが、状況から判断するに、もう少しお金を積めば、できそうな話になったと思いました。会社のお金を操作すると問題になるので、個人でお金を出して、その分は後日何らかの方法で調整してもらうことにし、お金を増やしてX氏と再交渉することになりました。

 

AさんはまたX氏にアポを取り、出入国管理局の近くのお店で合って交渉に臨みました。なんとか罰金を避けててほしいと言って、厚みの増した封筒を書類に挟んでクリアファイルに入れてテーブルに置きました。Aさんはトイレに行くと言って席を立ち、X氏が厚みを確認したのを見て席に戻りました。

 

X氏は、「わかりました。○○(別の出入国管理局)に行って、Z氏に頼めば、就労類居留証の手続きができるようにしましょう」と言い、さらに「もう一袋用意して下さい担当者の分も要りますから。もう一袋もらったらZ氏の連絡先を教えます」と言う話で、X氏は袋を受け取り、一旦終わりました。

 

Aさんが会社に戻って、もう一袋必要と聞いた時には、普通に罰金を払った方が安かったんじゃないかと思いました。ですが、中国側親会社としてはグループ会社とは言え罰金という記録が残ることは避けたいとの意向であるので、やむなしと考え、もう一袋用意することにしました。

 

AさんはまたX氏に連絡を取り、もう一袋は就労類居留証が取れたら渡すので、先にZ氏の連絡先と今後の段取りについて教えてくれるように交渉し、X氏とその方向で話がまとまりました。

 

それから数日後、Aさんと別の出入国管理局へ行きZ氏に会い、就労類居留証取得に必要な書類を見せました。Z氏は、「X氏から、これは不法就労だって言われなかった?」とわざとらしく皮肉を言われました。Aさんが釈明を始めると、Z氏は申請書の枠外に、親族訪問類居留証から就労類居留証に切り替えみたいなメモ書きを記入してくれ、後は窓口で手続きが完了しました。

 

10日程過ぎて指定の日に、パスポートを取りに行くと、ちゃんと就労類居留証が取れてました。Aさんに連絡し、X氏との会食を依頼したら、はじめてX氏は会食をOKしました。

 

会食では、就労類居留証が取れたのはX氏のお陰と感謝申し上げ、もう一袋の封筒を渡しました。X氏は中は見ず、触って厚みだげ確認した上で、「今後何か問題が起きたら、自分を呼んでくれ、うまく対応するから」と機嫌よく話していました。

 

会食以降1年以上、X氏とは合っていません。次の居留証の延長は正規の手続きで何の支障もなくできました。

 

振り返ってみると、中国の政府役人の一部には、本来国庫に入るべきお金をポケットに入れることに何の良心の呵責もない人もいるんだなと思いました。(X氏やZ氏の対応ぶりを見ると、このような事は珍しいことではないんだろうなと思ってしまいます。)

 

中国には、いろんな落とし穴があるけど、落ちても這い上がる方法もあるよなと一人納得し、今も合弁企業で働いています。

 

以上です。 参考になればうれしいです。ご覧頂き、ありがとうございました。